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小札・威糸
こざね・おどしいと

小札はここを見る

小札は実物の甲冑同様に和紙や革を漆(うるし)で固めた物(漆皮/シッピと読む)が上級品とされる。

プレス加工された「共吹造り」もあるので、「共吹造りは高級品」とは限らない

鎧・兜で、共に最大量を占める部品、それが小札(こざね)と、それを繋ぐ威糸(おどしいと)です。
小札は実物の甲冑同様に和紙や革を漆(うるし)で固めた物(漆皮/シッピと読む)が上級品とされ、次いで銅、真鍮、アルミ製小札などとなります。

また、仕上げは漆皮であれば黒漆(+透き漆)・金箔漆、真田氏や武田氏でおなじみの赤備えなら赤漆(+透き漆)。金属製小札であれば鍍金仕上げか樹脂コート(或いは焼付塗装)となります。

ちなみに「白檀(びゃくだん)仕上げ」という表記をたまに見かけますが、これは本来小札の裏側にトノコ状にした白檀を塗りこめ、その上から透き漆を引いて、芳香剤としての効果を狙ったもの。
いわば武士の身だしなみを再現した造りで、表面仕上げの事ではありません。

漆皮造りの物でも下図のように、小札を一個一個作って、繋げた物は手間の分だけ高くなります。

ただ、そうした上級品でも、曲がりの無い部分などは最初から一枚板に作ってしまう事があります。ちなみにページ上部の写真の物はすべて漆皮造りのものです。

対して、金属小札の場合には、一部の着用鎧などを除けば、長い金属板をプレス加工してそれらしく見せている物がほとんど。

実はココが曲者で、兜の吹返しで触れた「共吹造り」は、下図のように円の一部を外に向けてに開いた形になるのですが、プレス加工の板だと思いっきり裏側(尖った山になってる方)が外に見えてしまいます。

ちゃんと小札を組み合わせて作っている場合は、漆で一枚に仕立てる前に、途中から右図のようにS字型に小札の裏表を入れ替えしておく等が出来る(手間は余計にかかります)ので、こんなことは起こらないのです。

プレス板は曲げ加工が楽なので、「とりあえず共吹きにした」という甲冑も増えてきてます。
のみならず、この「裏が見えてしまう」のを避ける為に、最初から塩ビの波板のような形のプレス板を使う物もあります。
まあ、後者は、考えようによってはコストを押さえて品質を上げる工夫とも取れます。しかし、こうなると、もはや「共吹造りは高級品」とは限らないわけです。

こうした工房の努力を販売店が悪用して、さも高級品であるかのように売るケースだってあるんです。
個人の予算もありますから、高い鎧がすべてではありませんが、少なくとも値段以下の出来の物は買いたくないですよね。

ぱっと見に騙されず、各部の造りをじっくり見るようにしましょう。
節供物は安くないし、一生に何度も買うものでもないですから。

威糸はここを見る

編目に乱れが無く、リズミカルに編まれていること。
威糸自体の目が詰んでいて、編み込みにも隙間の無いものがよい。

威糸は小札と小札を繋ぐ甲冑の重要部品です。
本来は「緒通糸」(おどおしいと)と書いたという説もあります。
革紐か綿紐を使うのが本来の姿ですが、飾り物ということで、絹製の物も多くあります。

ただし、やはり元は武具ですから、
目の荒い低レベルのシルク物よりは、目の詰んだ綿製の物を選びたいところ。

実際、絹を使った「だけ」の製品なら、後者のほうが手のかかった分だけ元値は張ります。
安易に「正絹製」を選ばないこと。もちろんきちんと作られた本物の正絹物なら価値は大きいですが。

見分ける目安としては、編目に乱れが無く、リズミカルであること。
威糸自体の目が詰んでいて、編み込みにも隙の無いこと、などでしょうか。

威しの色目に関しては、好みで選んでしまっていいでしょう。
この色だから高い、ということは基本的にはありません。
(本当に紫貝で染めた紐、とかなら話は別ですが、まずないですから)